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2017年1月20日 (金)

2016年12月24日(土) クリスマスイヴ・キャンドル礼拝説教「闇に輝く光」

20161224日(土) クリスマスイヴ・キャンドル礼拝 説教「闇に輝く光」大柴譲治

マタイによる福音書 1:1-2:23

闇に輝くキャンドルの灯火

 私たちは今、一年中で一番闇の深い時期を迎えています。今年は1221日(水)が「冬至」でした。一年中で夜が一番長くなる時です。北半球では闇の最も深くなるこの時期に、「義の太陽」であるキリストの到来を迎えるクリスマスが祝われることはとても意義深いことであると思います。今宵はクリスマスイヴのキャンドルサービス。闇の中にゆらぐキャンドルの光を見つめていると、私たちの心には不思議に温かい平安な気持ちが充ちてくるように思います。この一年は皆さまにとってどのような一年だったでしょうか。穏やかな一年を過ごされた方もおられましょうし、反対に激動の一年を過ごされた方もおられましょう。お一人おひとりが心のうちで様々なことを思い起こしておられることでしょう。私たちは様々な思いをもってここに集まっています。キャンプファイアーの炎もそうでしょうが、闇を照らすキャンドルの灯火は、私たち一人ひとりに自分の内側を省みて見つめる静かな時を与えてくれるのです。ご一緒にこのひととき、キャンドルライトの中で、静かに主のみ言葉に思い巡らせてまいりたいと思います。

 クリスマスは不思議な情景に満ちています。そこには不思議なことがたくさん出てくるのです。

 もちろん、神が人となって救い主としてこの地上にお生まれになった(降り立たれた)ということ(受肉の出来事)自体が大変に不思議なことなのですが、それ以外にいくつもの不思議なことが続きます。

 天使による受胎告知(マタイでは父ヨセフに、ルカでは母マリアに)。

 ベツレヘムの上空に救い主の誕生を告げる不思議な星が現れる。

 その星を見て、東からの占星術の博士たちがはるばると、黄金・乳香・没薬という三つの宝物を持って、幼子イエスを拝みに来た。

あるいはルカ福音書によると、

 夜羊の番をしていた羊飼いたちに天使たちが現れて救い主の誕生を告げ、

 天から天使たちの讃美の歌声が響き渡ったりと、

私たちの思いを遙かに超えた「不思議なこと」が続きます。

 普段は目に見えないもの、耳に聞こえないものが、見えたり聞こえたりしてくるのです。クリスマスは本当に不思議な、神秘的なエピソードに満ちていますね。子どもの頃の心と感性を取り戻さないとクリスマスの出来事の本当の意味は分からないのかも知れません。サンテグジュペリの書いた『星の王子さま』の中に、「大切なものは目に見えない。心の目で見なくちゃいけないってことさ」というキツネが王子さまに語る言葉がでてきますが、それを思い起こします。実はクリスマスの出来事は私たちに、私たち自身の心の目を開き、心の耳を開くようにと促しているのだと思います。心の目、心の耳を開く時に、それまで見えなかった大切なものが見え、それまで聞こえなかった大切な天使たちの歌声が聞こえてくるのでしょう。私たちは心の目、心の耳を開き、心で感じながら、大切なものを受け止めてゆきたいと思います。

 二千年前のベツレヘムで幼子イエスがお生まれになったという出来事から、新しい時が始まったのです。昨日もシュッツ合唱団によるクリスマススペシャルマンスリーコンサートがこの場所で行われ、いくつもの讃美歌や音楽の捧げ物が奏でられました。今宵のキャンドルサービスでも私たちは何曲もクリスマスキャロルを歌っています。どれもすばらしい音楽であり、感謝と讃美、そして信仰告白の歌です。クリスマスを彩る音楽は不思議な慰めと希望の響きに充ちています。闇の中に光が点されたのです。そしてこの光は闇の中に輝き続けています。この光があるから、私たちはどんなに暗い世界であったとして、希望を失わずに生きてゆくことができる。もしクリスマスの出来事がなかったとしたら、このような素敵なキャロルも宗教音楽も存在せず、私たちは依然として絶望的な闇の中に生きるほかはなかったのだと思うのです。

 

映画『アポロ13

 クリスマスの時期になると、私は必ず思い起こすエピソードがあります。私は映画鑑賞が趣味の一つなのですが、この時期は『アポロ13』(1995)のワンシーンを思い起こします。アポロ13号は1970411日に打ち上げられた月面探査を任務とした宇宙ロケットです。そこにはJ・ラヴェル、J・スワイガート、F・ヘイズという三人の飛行士が乗っていました。しかしアポロ13号は、打ち上げられて二日目で電線がショートし、火花が飛んだことで酸素タンクが爆発・損傷するという致命的な事態を迎えます。電力と酸素の供給が断たれてしまったら生命を維持することはできません。絶体絶命です。彼らは当初の月面着陸のミッションは放棄せざるを得ませんでした。彼らは着陸船を救命ボートに見立てて乗り移り、地上のNASAとの手に汗を握るやり取りを通して、自分たちにできる限りの手立てを尽くし、電力を限界まで抑え、飲料水の摂取を極力控えることを通して、無事地球に帰還することができたのでした。このピンチへの対応の鮮やかさにより、アポロ13号は、「成功した失敗 ("successful failure")」、「栄光ある失敗」などと称されています。

 私が思い起こす映画の一場面は、トム・ハンクス演じるジェームズ・ラヴェル船長が、インタビューの中で、かつて海軍のジェットパイロットだった時に自らが体験したある事故に言及するシーンです。日本海での夜間訓練飛行中に突然、電気系統の故障でコックピット内の計器を照らすライトが瞬時にすべて消えてしまいました。マッハ(時速およそ1200キロ)を超える速度です。機が水平に保たれているかということを示す水準器も、飛んでいる方向も、残りの燃料の量も、何も計器が見えません。突然の真っ暗闇。絶体絶命のピンチ。突然の闇の中でラヴェル飛行士は瞬間祈るような思いになったそうです。何とか感覚によって機体を水平に保ちながら、周囲に目を向けつつ、闇の中を飛んでいたら、しばらくして目が闇に慣れてきた。すると不思議なことに海がボーッと青白く輝いているのが見えてきたのだそうです。それは海に浮かぶ夜光虫の光でした。コックピットが明るいうちには見えなかったほど弱い光。その光によって海面がどこにあるか、天がどの方向かが分かりました。そしてさらによく目を凝らして見ると、そこには航空母艦が通った跡がくっきりとひとすじの黒い線になって見えていたということです。それは航空母艦が数時間前に夜光虫を押しのけて通った跡でした。ラヴェル船長それを道標(みちしるべ)として母艦に帰艦することができたのですとインタビューに答えて淡々と語っていました。どのような危機の中にあっても決して諦めることなく、沈着冷静さを失わない宇宙飛行士だからこそ、アポロ13号の酸素タンクの爆発/故障という絶体絶命の危機を乗り越えて無事地球に生還することができたのでしょう。不可能に見えることを可能とした宇宙船と地上のクルーたちの手に汗握る懸命な努力とチームワークも印象に残ります。ぜひ皆さんにも観ていただきたい映画でもあります。「大切なものは目に見えない。心の目でみないと」という言葉と重なります。

 この世の闇の中に救いに至る一本の確かな道筋が暗い地の上に貫かれています。それは目を凝らさなければ見えてこないような弱い光の道かも知れません。傷ついた葦を折ることなく、暗くなって行く灯心を消すことのないお方の光の道です。そこには主キリストが歩まれた道が浮かび上がっていて、その道はゴルゴダの丘の十字架へと続いています。私たちは心の目を凝らして、私たちのために神によって備えられた人生の道標を見出してゆきたいと思います。東方からの博士たちの旅は星を道標とする夜の旅でした(マタイ2:1-12)。ヘロデの心が端的に示している人間の闇においてもその光は輝いているのです。それは赤々としたまばゆい光ではなく、夜光虫のような弱々しい光かもしれない。しかしそこには確かなひとすじのまっすぐなラインが刻まれているのだと信じます。そのひとすじの道こそ、私たちをあふれる喜びといのちと救いへと導くキリストの受肉と十字架と復活の道です。「天には栄光、地には平和」と歌う天使たちの歌声にご一緒に耳を澄ませてまいりましょう。お一人のおひとりの上に、メリークリスマス!

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